「生きていれば、それでいい」
東日本大震災から9年。
私は宮城と福島に通算8年間住んでいたことがあります。
9年前のあの日、私はすでに今の街で暮らしていましたが、あの大震災は私にとっても心がえぐられるような出来事でした。
それでも、私は遠く離れた地に住む人間。あのとき、あの場所にいて大きな被害を受けた方々の痛みは、私の想像など遥かに超えるものでしょう。
TV報道で、ご家族を亡くされ、残されたお父さんと息子さんのインタビューを見ました。
その中で、お父さんは今年就職して親元を離れる息子さんについて
「生きていればそれでいい」
と仰っていました。
なんという重みのある言葉でしょう。
常日頃、子どもたちと接していると、あれもこれもと求めたくなるときがあります。
子どもたちの成長のために、求めること自体は悪いことではありません。
けれど、親として根本にある
「生きていれば、それでいい」
という思いを、ときどきは取り出してみたいと思いました。
探検と出会いと菜の花
息子カイ(小1)は、探検ごっこが大好き。
休日には「新しい公園を探す」とか、「知らない道をひたすら歩く」とかといった探検の旅に出ます。(小学一年生なので保護者つき)
先日は、前々から気になっていた、近所の神社の裏手から続く細い道(舗装されていない、けもの道のような、でも人の手が入っていると思われる道)を進んでみることに。
小高い丘の上にある神社から出発すると、すぐさまそこは森の中。
昨年の台風の影響でしょうか。ところどころ大木が倒れていたりして、探検隊の士気は高まります。
特に隊長の意気込みたるや。
「ここは、かなり古い道だな。たぶん、エドジダイだ…」
と難しい顔をしてみたり
「ここは危険だ!ママ!しゃがんで通って!!」
と隊員を気遣ったり。
少し進むと、視界が開けてきました。
畑があります。
そして、なにやら話し声が聞こえてきました。
人に会うと思っていなかった私は急にソワソワ。
私有地だったのかな?怒られちゃう??
でも隊長はお構いなしに進みます。
ええい、仕方ない。
隊長の後を追って進むと、畑にいたおじいさんと目が合いました。
「こんにちはー」
挨拶すると、おじいさんもにこやかに返してくださいました。
それだけでホッとする小心者の隊員をよそに、
「ぼくたちは探検してるんだ!」
と高らかに宣言する隊長。まぶしすぎます。
おじいさんは楽しげにカイに話しかけ、和やかなムード。
おじいさんからは、この小道を進んで大通りに出るルートのほか、私たちでは気づかなかった脇道から山を越える別ルート、更にはおじいさんの畑を通り抜ける近道まで教えていただきました。
それじゃあ、とばかりに近道を選択。
おじいさんは、せっかくだから…と畑の一画に咲き乱れている菜の花を切ってくださいました。
すると、すかさずカイが「これ食べれるヤツ?」
隊長、遠慮がなさすぎます。
いやぁこれはだいぶ咲いてるからねぇ。じゃあ、食べる用のもあげよう。
と蕾もいただいてしまいました。
菜の花(蕾も含め)を沢山抱えた私たちに、「またおいで〜」と笑顔で手を振ってくださるおじいさん。手を振りながら温かい気持ちになりました。
帰宅後、花は花瓶に、蕾は煮浸しとなり私たちの口に。
菜の花は、えぐみも苦味も全く無く、優しいお味でした。
カイは、あれから、誰に何を言われなくても朝晩進んで花瓶の水を替えてくれます。おじいさんとの出会いを大切にているようで私も嬉しくなります。
今週の本棚
我が家の読書会、今週皆が読んだ本はこちら
まずは末っ子チイコ(3歳)と長男カイ(小1)
チイコは自分では読めないので全て読み聞かせです。読み聞かせていると、いつの間にかカイも隣にやってきて一緒に聞いているのがお決まりのパターン
- 作者:舟崎 克彦
- 発売日: 1995/10/15
- メディア: 大型本
チイコ★☆☆☆☆
カイ ★★★☆☆
きうい★★★★☆
言わずと知れた、古事記に伝わる物語。忠実に絵本化されているし、シリーズ物の中の一作なので、出雲に辿り着く前のスサノオの狼藉三昧から描かれているあたり、これまでに見たやまたのおろちの絵本の中では、これが一番好きです。でもチイコには少し難しかったみたい。カイは、オロチとスサノオの迫力に惹かれたようです。
- 作者:長谷川 摂子
- 発売日: 2004/07/15
- メディア: 単行本
チイコ★★★☆☆
カイ ★★★☆☆
きうい★★★☆☆
簡単に言うと、優しいおじいさんと世話になった動物達の恩返しのお話なのですが…。 よくある昔話とはちょっと違うストーリー展開。そして、長谷川摂子さんの軽妙な語り口により、楽しく読めます。あと、頑張ってるけど途中で遊んじゃう犬猫が好き。 チイコは、猫があくびしてるところが好きだそう(それって内容じゃなくて表紙だよね?)
- 作者:野坂 勇作
- 発売日: 2004/11/20
- メディア: 単行本
チイコ★★★★☆
カイ ★★★☆☆
きうい★★★☆☆
科学絵本。しもばしらってなぁに?どうやって出来るの?という疑問と答えが絵本になっています。カイが学校から借りて来ましたが、チイコの方が気に入って何度も読んでいます。 読み聞かせてあげる前、チイコが一人でこの絵本を開いてオリジナルのお話をしていました。曰く「"しいたけきのこさん"のおはなし」。 チイコのオリジナリティ爆発の物語で、ちゃんとした読み聞かせをするのが勿体ないと思った程でしたが、せがまれて本の通りに読んでしまいました…。以降、しいたけきのこさんは現れなくなりましたが、チイコは絵本の中の「さっくすっく さっくすっく」というしもばしらを踏む音が気に入って、よく口ずさんでいます。
Haruko(小5)は、
- 作者:石川 宏千花
- 発売日: 2012/10/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 作者:ノリス,アンドリュー
- 発売日: 2019/02/08
- メディア: 単行本
- 作者:深山さくら・文
- 発売日: 2011/08/10
- メディア: 単行本
AI技術が発展すると… 〜娘Haruko(小5)の考察
AI技術の発展により、進化を続けるお掃除ロボットのニュースを見ていた娘のHaruko(小5)、こんなことをつぶやきました。
「そのうち、普通に会話するロボットが作られるかもね。
普段は、言って欲しいことを言ってくれる。でも、時々は喧嘩しちゃうの。それですっごく嫌な気分になるようなヤツじゃなくて、ちょっとした喧嘩。
そんなふうに、自分に都合の良い会話が出来るロボットがいたら、本当の人と関わらなくてもいいって言う人も出てくるかもしれないよね。
でも、私は、そんなの嫌だな」
《でも、私は、そんなの嫌だな》
私は、その言葉を噛みしめました。
だってHarukoは、一年半前、人との関わりを断とうとしていたから。
習い事にも行かなくなり、学校にも行けなくなり、外出出来なくなり、部屋に閉じこもり…
徐々に周囲との関係を断ち切り、自分の殻に閉じこもろうとしていたHaruko。
自分自身を責めて責めて心が荒れ、そんなHarukoと接する家族皆が辛い時期を過ごしていました。
それが、今。
自分に都合の良い会話だけをするロボットの登場により、本当の人と関わらなくても良い世界を予測し、
《でも、私は、そんなの嫌だな》
と…。
嫌なことがあっても、面倒臭くても、人と関わることを選びたいと思うんだね。
現在も不登校は続いているけれど、Harukoの心の変化に感無量になりました。
我が家の読書会 〜 子ども達が選んだ本
我が家の読書会にて、子ども達が選んだ本と、それぞれの反応をご紹介します。
チイコ(3才)
- 作者:日野 十成
- 発売日: 2005/11/10
- メディア: 単行本
チイコ★★★★★
カイ ★★★★☆
キツネのいたずらに、お寺の小僧である"ずいとんさん"が知恵を絞って対抗するお話。
大人から見ると「……で?」と思うような若干淡白な印象のお話ですが、何故かチイコはこの話が大好き。何度も何度も読むことをせがまれます。小1のカイも「ずいとんさんが頭つかって、頭がいいはずのキツネをやっつけるとこが好き」とのこと。小さな子どもたちにとって、ずいとんさんは等身大の存在なのですね。
私は、山寺の細かいところまで描かれた絵が好きです。少し薄暗くだだっ広い様子が、一人で留守番するずいとんさんの心細さを表しているように感じます。
カイ(小1)
おしりたんてい かいとうと ねらわれた はなよめ (おしりたんていファイル)
- 作者:トロル
- 発売日: 2019/04/20
- メディア: ハードカバー
Haruko(小5)
- 作者:宮部 みゆき
- 発売日: 2006/05/24
- メディア: 文庫
そして私
途中からチイコとカイに読み聞かせをしてあげたので、あまり進みませんでしたが…
- 作者:池井戸 潤
- 発売日: 2013/12/21
- メディア: 文庫
我が家の読書会 〜 ゲームばかりでもなんですし
我が家のこども達はゲームが大好き。
今は何はさておきゲームが優先の様子。
でも、本来は工作や読書も好きなこども達。
できれば読書の時間も大切にしたいな。 という思いから、毎週土日の夜に読書会を行っています。
夜9時には就寝するので、時間は夜8時15分から8時45分までの30分間。 それぞれが好きな本を持ち寄り、お茶とちょっとしたお菓子をお供に、家族全員リビングで読書します。
こども達も、この時間を気に入っている様子。
昨日もHarukoの弟のカイ(小1)と妹のチイコ(3才)が、こんな会話をしていました。
「にぃにぃ、きょうは、おやつ会あるかなぁ」
「おやつ会は、お休みの日にやるから、今日は無いよー」
ん?
おやつ会??
読書会だよ!
おやつはおまけ!
メインは本を読むことだよ!!
次回はそれぞれが選んだ本と、子ども達の反応をご紹介します。
娘が不登校になって世間の反応
「世間」と言っても、娘の同級生のお母さんとかご近所さんとかのことですが。
娘のHaruko(小5)は小学校に入学してからずっと登校渋りがありました。
それでも何とか学校に通っていましたが、4年生になって休みがちとなり、ついには全く登校しなくなりました。
私にはいわゆる"ママ友"はいませんが、子らの同級生のお母さんのうち、顔見知りとなった方たちとは、お互い会えばなんとなく挨拶をしたりちょっとした立ち話をしたりはします。
おそらく皆さん、それぞれのお子さんを通じてHarukoが不登校になったことは聞かれているのでしょう。
その反応は、大きく2つに分けられます。
その1。以前よりも、温かい眼差しで挨拶されるようになったパターン。
すれ違えば挨拶する程度の方ですが、その挨拶が、なんとなく優しくなったと言うか…。
勝手ながら、もしかしたら「何かあればお話聞きますよ」的なスタンスなのかなぁと想像し、嬉しく思います。
逆に、明らかによそよそしくなった方たちもいます。
ばったり出会うと、すっと目をそらすとか。
以前はすれ違いざまに「暑いねー」「ほんとねー」なんて当たり障りない会話をしていたのに、そそくさと行ってしまうとか。
最初は気のせいかと思っていましたが、複数の方からのそういう反応が続いたため、今回の認識に至りました。
私、避けられてるの?
それはHarukoが不登校になったから?
子どもが不登校になったのに、のほほんと過ごしている無責任な親に見えるのかな?
少し悲しく感じましたが、それで避けられるなら仕方ありません。もともと合わない方たちだったのでしょう。
と思っていましたが、最近、少し違うこともあるかも?と思い始めました。
というのも、そのうちのお一人とお話しする機会があったからです。
所要があり私から話しかけた際に、こちらからHarukoの不登校について少し触れると、堰を切ったように、不登校の理由や現状について、あれこれ尋ねられました。
その話ぶりに少し引っかかる部分はありましたが、それはさておき、感じたのは、今までどう話しかければ良いのか分からなかったのかな?ということです。
機会を得たことで、胸に燻っていた質問をすることが出来て、むしろスッキリしたかに見えました。
そして、それ以降は、以前のような「普通の」挨拶に戻ったのです。
もしかしたら、彼女たちは、「子が不登校になってしまった母親」に対して、どう接してよいのか分からないがために、よそよそしい態度になってしまっていたのかもしれません。
それは「不登校」をネガティブにとらえているからこそ、という側面もあるようにも思います。
話をしたからといって、全ての人に理解してもらえるとは思いませんし、こちらの思いが真っ直ぐ伝わるとは限らないことも分かっています。
それでも話をすることで、Harukoのような生きづらさを抱える子たちが少しでも楽に呼吸が出来る環境作りにつながるかもしれないのならば、Harukoの不登校について、積極的に伝えて行こうかなと思った出来事でした。